売り場で「ニューバランスが欲しいけど、996も574も1万円台後半。もう少し抑えたい」と言われたとき、店員がそっと出す一足があります。それが373です。見た目はニューバランスそのもの。でも値札を見ると桁が一つ足りないように感じる。「これ、何が違うんですか?」と聞かれる回数が、店頭でいちばん多いモデルでもあります。
結論から言うと、373は「引き算でできたニューバランス」です。上位モデルが積み上げてきたクッション技術やパーツを意図的に外し、そのぶん価格を下げている。だから軽いし、値段も手に取りやすい。一方で、長時間歩き回る用途では上位モデルに一歩譲ります。この線引きさえ分かっていれば、373は失敗しない買い物になります。
この記事では、373が2009年に生まれてから今日までどう位置づけられてきたのか、ソール・アッパー・重量という具体的な仕様、ML373とWL373で違うウィズ(足幅)の選び方、そして574・996と並べたときの差までを、公式リリースの数値をもとに整理します。「疲れる」「ださい」という検索されがちな声についても、原因を分解して対処法まで書きます。
・373が2009年に登場してから担ってきた役割と、ML373/WL373/キッズまで揃うファミリー構成
・EVA一枚のミッドソール・スエード×メッシュのアッパーなど、373の特徴を仕様レベルで
・ML373はD、WL373はB。ウィズから逆算するサイズ選びの手順
・574・996・565と並べた比較表と、「疲れる」「ださい」と言われる理由の分解
ニューバランス373とは?2009年生まれのライフスタイルモデル

373は「速く走る靴」ではなく「毎日履く靴」として設計された
373はニューバランスのLIFESTYLE(ライフスタイル)カテゴリに属するスニーカーで、公式のニュースリリースによれば2009年に発売されたモデルです。ランニングシューズの見た目を借りていますが、開発の狙いは競技用の性能ではなく、街で毎日履くための扱いやすさにあります。だから作りがシンプルで、価格も抑えられている。
この「シンプルさ」は手抜きではなく設計思想です。574や996に載っているENCAP・C-CAPといった特殊なクッション材を373は積んでいません。ソール部分のリフレクター(反射材)もありません。パーツを減らすと工程が減り、重量も落ちる。結果として、ニューバランスらしい見た目を保ったまま価格を下げるという着地になっています。
使いどころは、通勤の行き帰り、買い物、子どもの送り迎え、近所の散歩といった1回30分〜1時間程度の移動です。一方で、テーマパークを朝から晩まで歩き回るような日には、クッションの厚い上位モデルのほうが足は楽です。ここを混同すると「思ったより疲れた」という感想になります。用途を先に決めてから選ぶ靴だと考えてください。
ML373・WL373・キッズまで揃う「373ファミリー」
373は1型だけのモデルではなく、家族全員ぶんが揃うシリーズとして展開されています。大人向けはユニセックスのML373とウィメンズのWL373。ここに2021年からキッズが加わり、ジュニア用のYV373、インファント用のIZ373が登場しました。ニューバランス公式のリリースでは、YV373が5,720円(税込)でサイズ17.0〜24.0cm・ウィズM、IZ373が5,170円(税込)でサイズ12.0〜16.5cm・ウィズWと案内されています。
キッズモデルは見た目こそ大人の373を踏襲していますが、中身は子ども向けに作り替えられています。YV373は耐久性に配慮した面ファスナーと、着脱しやすいゴムシューレースの組み合わせ。IZ373はシュータンと面ファスナーが開いた状態で止まる構造で、履かせる側の手間が減ります。ミッドソールにEVAを使う点は大人モデルと共通です。
親子でお揃いにできる価格帯であることが、373が家族層に支持されてきた理由のひとつです。ただし注意点として、キッズの成長は速く、面ファスナーは砂やホコリを噛むと保持力が落ちます。半年に一度は面ファスナーのループ部分をブラシでかき出して、ゴミを取ってやってください。
今も普通に買えるモデルなのか
373は現行ラインナップとして流通しています。ニューバランス公式通販の373検索結果では、メンズ・ウィメンズ・ユニセックス・キッズにまたがって多数の品番が並んでおり、生産終了・廃盤といった扱いにはなっていません。「ニューバランス 廃盤」で調べると出てくるのはM1400や576といった別モデルの話で、373とは無関係です。
ただしカラーや品番の入れ替わりは頻繁です。373は「定番の型に季節ごとの色を乗せる」運用がされているため、去年見た色が今年は棚にない、ということが起こります。気に入った色が見つかったらサイズを確認して押さえる、というのが現実的な向き合い方です。
もうひとつ、モデルは同じでも仕様が更新されている点は押さえておいてください。2022年の公式リリースでは、ML373・WL373ともに踵回りの形状をアップデートしたと案内されています。何年も前の履き心地レビューを読むときは、その時点の個体の話である可能性を差し引いて読むのが安全です。
LIFESTYLE(ライフスタイル)=ニューバランスが自社製品を分ける区分のひとつで、競技用ではなく街履き前提のカテゴリ。373はここに入る。同じ見た目のランニングシューズ風でも、RUNNINGカテゴリの製品とは想定される使用時間・衝撃の量が違う。
373の特徴は「引き算」にある|仕様で見る4つのポイント
ミッドソールはEVA一枚。ここが373の正体
373の性格をいちばん決めているのがミッドソールです。373はEVA(樹脂系のクッション素材)のみで構成されており、574のENCAPや996のC-CAPといった追加構造を持ちません。ENCAPはEVAをポリウレタンで包んで耐久性と安定性を足した構造、C-CAPはEVAを圧縮してクッションの持続力を高めた素材です。373はそのどちらも使っていません。
この構成の利点は軽さと素直な接地感です。余計な層がないぶん足裏で地面をつかむ感覚が残り、平らな舗装路をきびきび歩くときには扱いやすい。ニューバランス公式のリリースでも、373のEVAミッドソールはクッション性と耐久性に優れたものとして紹介されています。
弱点も同じところから来ます。EVA単体は使い込むにつれてへたりが進みやすく、上位モデルほどクッションの持続力がありません。1日1万歩を超えるような使い方をするなら、かかとの底づき感が出てくる前に履き替えるか、後述するインソールで補うのが現実的です。「373は軽い代わりにクッションの余力が少ない」と覚えておけば判断を誤りません。
アッパーはスエード調とメッシュのコンビネーション
アッパーは人工皮革と合成繊維の組み合わせで、メッシュをインレイ(内側の面)に、スエード調素材をオーバーレイ(上に重ねるパーツ)として使う構成です。メッシュが通気を担当し、スエード調のパーツが型崩れしやすい部分を押さえる。ニューバランスの伝統的な作りをそのまま踏襲した組み合わせです。
見た目の効果も大きく、単一素材のスニーカーに比べて表情に奥行きが出ます。グレーやベージュのような中間色を選んだとき、光の当たり方で濃淡が生まれるのはこの二層構造のおかげです。カジュアルにもきれいめにも寄せられるのは、素材のコンビネーションが理由と考えていいでしょう。
注意点は手入れの方法が素材ごとに変わることです。スエード調の部分に水をたっぷり含ませると毛並みが寝て黒ずみ、メッシュ部分は乾きが遅い。両方を同じやり方で洗うと片方が傷みます。この扱い方は後半のH2で手順に落とします。
アウトソールのゴムとヒールカップが担当している仕事
アウトソールはゴム底(ラバー)で、濡れた路面でのグリップを担当します。ミッドソールが薄い設計のぶん、地面に触れる面のグリップ力が歩きやすさを左右する。ウィメンズのWL373ではクラシカルなガムラバーが使われており、見た目のレトロ感にも寄与しています。
もうひとつ効いているのがヒールカップです。かかとを包む硬めのパーツで、着地したときに足が横にぶれるのを抑えます。2022年の公式リリースでML373・WL373ともに踵回りの形状がアップデートされたと案内されているのは、この部分の話です。安定感の評価が世代によって割れるのは、ここが変わっているからでもあります。
デメリットとしては、ソールが薄めなぶん摩耗の影響が出やすいことが挙げられます。かかとの外側だけが削れてきたら、それは歩き方の癖が出ているサインです。片減りが進んだまま履き続けると足の向きが崩れるので、削れ方を月に一度は確認してください。
25.5cm片足で約212g。数字で見る軽さ
スペックとして公表されている重量は、ML373が約212g(25.5cm片足)、WL373が約200g(23.5cm片足)です。ミッドソールがEVA一枚であることと、リフレクターなどの付属パーツを省いていることが、この数値に直結しています。原産国はインドネシアです。
体感として効くのは、階段の上り下りと立ち仕事の後半です。片足で数十g軽いだけでも、1日1万歩なら足を持ち上げる回数ぶんの差が積み上がる。「歩くこと自体は多いけれど、1回あたりは短い」という日常の使い方と相性がいいのは、この軽さがあるからです。
ただし軽さは万能ではありません。軽い靴は接地の衝撃を素材で吸収する余地が少なく、硬い路面を長く歩くと足裏に負担が集中します。アスファルトを2時間以上歩く予定があるなら、373ではなくクッション量のあるモデルを選ぶほうが足は楽です。
| サイズ展開(ML373) | 22.5〜29.0cm(0.5cm刻み) |
| ワイズ(足幅) | D(品番によっては2E展開もあり) |
| 重量 | 約212g(25.5cm片足) |
| アッパー/ソール | 人工皮革・合成繊維/EVAミッドソール+ゴム底 |
| 店頭価格 | 10,890円(時期・販売店により変動) |

サイズ選びは「cm」より先に「ウィズ」を決めると外さない

ML373はD、WL373はB。同じ373でも幅が違う
373のサイズ選びで最初に見るべきはcmではなくウィズ(足幅)です。ニューバランスのウィズはB<D<2E<4Eの順に広くなり、Bが細身、Dが標準、2Eが幅広、4Eが甲高幅広向けという位置づけになっています。そしてML373のウィズはD、WL373のウィズはBです。同じ373を名乗っていても、この2つは前提が違う靴だと考えてください。
ML373はユニセックス扱いで、日本人男性の平均的な足幅ならDでおおむね収まります。普段のスニーカーサイズをそのまま選んで大きく外すことは少ないでしょう。一方、WL373のBは女性向けに横幅だけでなく縦の作りも小さめに設計されているため、レディースサイズだからと安易にcmを合わせると窮屈になることがあります。
使い分けの目安はこうです。足幅が平均か細めの女性はWL373のBで問題ありません。足幅が広めの女性、あるいは厚手の靴下を履きたい人は、WL373にこだわらずML373のDから小さめのcmを探すほうが快適に履けます。ウィズを先に決めれば、cmは0.5cm単位の微調整で済みます。

幅広・甲高の人は2E展開の品番を探す
足幅に不安がある人にとって重要なのは、373にも2E展開の品番が存在するという事実です。価格比較サイトの製品情報でもウィズ2Eと記載されたML373が確認できます。Dがきついからといってcmを1つ上げると、今度は捨て寸が余ってかかとが抜けるようになります。cmを上げるのではなくウィズを上げる、が正しい順序です。
自分がどのウィズなのかは、足囲(親指の付け根と小指の付け根をぐるりと回した周囲)を測れば判断できます。メジャーを1本用意して、立った状態で軽く締める程度に回して測ってください。測る時間帯は夕方が基本です。足は日中にむくむため、朝の数値で選ぶと夕方にきつくなります。
注意点として、2E展開のカラーは数が限られます。「この色の2Eが欲しい」と条件を重ねると選択肢が急に細ります。色を優先するか幅を優先するかを決めておくと、店頭で迷う時間が減ります。足を痛める前提で色を優先するのは、長い目で見て損な選び方です。
574・996から乗り換える人がつまずくポイント
すでに574や996を履いている人が373に乗り換えるとき、同じcmを選んで「なんだか窮屈」と感じることがあります。理由は木型と素材の両方です。996はSL-1ラスト、574はSL-2ラストという別々の木型で作られており、574はつま先に丸みのあるフォルム、996は細身のシルエットになります。373はこの中間的な見え方で、つま先はシャープ寄りです。
加えて、373のアッパーは996と比べると硬めに感じられることが多く、横幅も狭く感じるという声があります。革やニットのように履き込んで伸びる素材ではないため、最初のきつさが後から解消されにくい。試し履きの段階できついなら、その感覚はほぼそのまま残ると考えてください。
失敗パターンとして多いのが、「574の26.5cmを履いているから」と373の26.5cmを通販でそのまま買い、小指の付け根が当たって履かなくなるケースです。原因は木型差とアッパーの硬さ。対策は単純で、乗り換え時は必ず一度実店舗で同じcmを履いてみること。試せない場合は、サイズ交換に対応している販売店を選ぶことです。
ML373のサイズ展開は22.5〜29.0cm、WL373は22.5〜25.0cm。25.0cm前後は両方に存在する重複ゾーンで、ここだけウィズがDとBで分かれる。同じcmでも別物なので、商品名の「ML」「WL」を必ず確認してからカートに入れること。
574・996・565と何が違うのか、一枚の表で整理する
574との違いはソール構造。ENCAPを積んでいるかどうか
373と574は「兄弟モデル」と呼ばれるほど見た目が近く、店頭でも取り違えが起きます。決定的な違いはミッドソールです。574はEVAをポリウレタンで包んだENCAP構造を採用しており、弾力性が高く、オフロードでも使える安定性を持たせています。373はEVAのみ。この差がクッションの厚みと持続力に出ます。
歩いたときの印象で言うと、574はふかっと沈む感触があり、373は素直に押し返す感触です。574の起源がトラック以外でのランニングを想定したオフロード用シューズであることを考えると、この味付けの違いは設計上の必然です。ソールの傾斜も373のほうが滑らかで、つま先はシャープに見えます。
選び分けの基準は歩行時間です。1日1〜2時間以上、硬い路面を歩くなら574。移動が短く、軽さと価格を優先するなら373。ABC-MART公式通販でのML574の店頭価格は10,890円が目安で、373と近い価格帯に並ぶことも珍しくありません。価格が近いときは、用途で決めるのが後悔しないやり方です。
996との違いはラストとクッション材の両方
996はミッドソールにC-CAPを使っています。EVAを圧縮して作るクッション材で、574のENCAPよりやや硬めに感じられる代わりに、クッションの持続力と軽量性、安定感に優れます。木型はSL-1ラストで、細身のシルエットが特徴です。ニューバランスのスタンダードシューズとして長く支持されてきたのはこの完成度によります。
373は996に対して、シルエットの方向性は近いのにソールは簡素、という立ち位置になります。細めに見えるのに価格は抑えめ、というポジションは373にしかありません。ABC-MART公式通販でのCM996の店頭価格の目安は16,280円で、373との価格差は小さくありませんが、その差額の大半はソール材と作りの精度に使われていると考えていいでしょう。
選び分けの目安はこうです。細身の見た目を保ったまま長く歩きたいなら996。細身の見た目だけが欲しくて、歩く距離は短いなら373。ここで996を選ぶべき人が373を買うと、「思ったより疲れる」という感想になります。逆に、373で足りる人が996を買っても、差額ぶんの体感は得られません。
565という「373の少し上」も知っておくと選びやすい
意外と知られていませんが、373の近所には565というモデルもいます。見た目は373とよく似ていて、メッシュとスエードのコンビネーションアッパー、やや細身のシルエット、比較的フラットなアウトソール。並べても違いを言い当てるのは難しいくらいです。
違いはやはりソールで、565はC-CAPを搭載しています。373が特殊クッション材を持たないのに対し、565は996と同じ系統のクッション材を積んでいる。そのぶん価格は373より高く設定されています。「373の見た目で、もう少しクッションが欲しい」という要望にちょうど当てはまる位置です。
注意点は流通量です。565は373ほど棚に並ばないため、狙って探さないと出会えません。店頭で見かけたら試し履きだけでもしておくと、自分にとって373で足りるのか、もう一段上が必要なのかの物差しができます。
| 項目 | 373(ML373) | 574(ML574) | 996(CM996) |
|---|---|---|---|
| ミッドソール | EVAのみ | ENCAP(EVA+ポリウレタン) | C-CAP(圧縮EVA) |
| シルエット | つま先シャープ寄り | つま先に丸み | 細身 |
| ラスト(木型) | 公表なし | SL-2ラスト | SL-1ラスト |
| ウィズ(主軸) | D(2E展開もあり) | 品番により異なる | 品番により異なる |
| 店頭価格の目安 | 10,890円 | 10,890円 | 16,280円 |

「疲れる」「ださい」と言われる理由を分解する
疲れると感じる場面には共通点がある
373を検索すると「疲れる」という語が並びます。これは事実に基づいた指摘で、原因はミッドソールにあります。ENCAPやC-CAPを持たないEVA一枚構成のため、上位モデルに比べてクッションの絶対量と持続力が控えめです。硬い路面を長時間歩けば、かかとに疲れが出やすい。
実際の声を見ても「デザインもよく軽く、価格も抑えめだが、ソールのクッションが弱いのかかかとに疲れを感じた。長時間歩く場合はおすすめできない」といった評価が見られます。これは373の欠陥ではなく、ライフスタイルカテゴリの靴に長距離歩行を求めた結果のミスマッチです。
逆に、1回あたりの歩行が30分程度で、荷物も軽いという条件なら、この不満はほとんど出ません。373を買う前に、自分の平均的な1回の歩行時間を思い出してみてください。それが1時間を超えるなら、574か996に予算を寄せたほうが満足度は高くなります。
「ださい」と言われる理由は3つに整理できる
「373 ださい」という検索が発生する理由も分解できます。1つ目は価格の安さから来る先入観です。ニューバランスの中では手に取りやすい価格帯にあるため、「安いモデル=格下」という連想が働く。2つ目はロゴとカラーリングの主張が強い個体を選んだ場合で、派手な配色は合わせる服を選びます。
3つ目がサイズの選び方です。ウィズを見ずにcmだけ大きめを選ぶと、足の甲に空きが出て靴だけが浮いて見えます。「なんとなく野暮ったい」の正体が、実は0.5cmのサイズ違いだった、というのは店頭でよく遭遇するパターンです。
対処はどれも簡単です。色はグレー・ブラック・ベージュ・オフホワイトといった中間色を選ぶ。サイズはウィズから決める。この2点を守れば、373は服を選ばない足元になります。ボリューム感が過剰でも貧弱でもないため、ワイドなカーゴパンツにも、細身のパンツにロングコートを合わせたスタイルにも収まります。
実は「安いから選ばれている」だけではない
意外と知られていないのは、373が価格以外の理由でも選ばれているという点です。特殊クッション材を積んでいないということは、ソールの構造がシンプルということでもあります。層が少ないぶん、劣化の起点になるパーツも少ない。上位モデルのポリウレタン層は経年で加水分解を起こすことがありますが、その心配が構造的に少ないのは373の隠れた利点です。
また、約212gという軽さは上位モデルでは簡単に得られません。クッション材を積めば必ず重くなるからです。「軽さ」という一点においては、373は上位モデルに対して優位に立っています。安いから機能が劣るのではなく、狙った機能のために引き算をした結果としての価格だと理解すると、評価の仕方が変わります。
ただし、この利点は使い方次第で消えます。長距離を歩けばクッション不足が前に出て、軽さの恩恵は感じにくくなる。373の良さは「短時間・軽装・舗装路」という条件でこそ立ち上がります。条件を外れた使い方をして評価を下すのは、この靴にとって不公平です。
373が向くのは「1回の歩行が30分〜1時間、荷物は軽め、路面は舗装路」という使い方。この条件なら約212gの軽さがそのまま効き、ソール構造がシンプルなぶん経年劣化の起点も少ない。逆に1日中歩く日用の一足としては、574や996にクッションで譲る。
買う前に決めておきたい3つのこと
価格は「公式の発表額」と「店頭価格」を分けて見る
373の価格を調べると、数字がばらついて混乱しがちです。整理すると、ニューバランス公式のニュースリリースでは、2021年時点でML373が9,240円(税込)、2022年時点でML373・WL373ともに9,790円(税込)と案内されていました。一方、現在のABC-MART公式通販やスーパースポーツゼビオでの通常価格は10,890円が目安です。
この差は時期による価格改定と、販売店ごとの価格設定の両方によるものです。ニューバランスは近年、原材料費の高騰を理由に一部製品の価格を改定しており、数年前の記事の金額をそのまま信じると実際の店頭で驚くことになります。値札は必ず現物で確認してください。
逆に言えば、セール時期には値下げも入ります。ゼビオでは通常価格10,890円のML373が割引価格で並ぶこともありました。急がないなら、季節の変わり目のセールを待つ手もあります。ただし人気カラーのサイズから消えるので、色にこだわりがあるなら定価で押さえるほうが確実です。
用途とシーンから逆算して型番を決める
373を買うかどうかで迷ったら、「その靴を履いて何をするか」を先に書き出してください。通勤で駅まで歩く、休日に近所を回る、子どもの送り迎えをする——このあたりが中心なら373で足ります。旅行で一日中歩き回る、立ち仕事で8時間フロアにいる、といった用途なら別のモデルを検討する場面です。
家族での買い揃えを考えているなら、373はコストの面で組みやすい選択肢です。大人がML373・WL373、子どもがYV373(5,720円)やIZ373(5,170円)と、同じデザインの系統で揃えられます。ニューバランスの公式ニュースリリースでも、373はファミリーで揃えられるシリーズとして紹介されています。
注意したいのは、この価格帯を「消耗品」として扱いすぎないことです。安く買えるからと手入れをせずに履き潰すと、寿命は目に見えて短くなります。ソールの摩耗とアッパーの汚れを月1回見る習慣があるだけで、履ける期間は変わります。

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買う場所は「試せるか」「交換できるか」で選ぶ
373は公式通販のほか、ABC-MART、スーパースポーツゼビオ、各種オンラインストアと、扱っている場所が多いモデルです。選択肢が広いのは利点ですが、初めての1足なら実店舗を優先してください。理由は前述のとおり、ウィズと木型の差が体感に出やすいからです。
すでにML373のサイズが分かっていて2足目を買うなら、通販が便利です。その場合はサイズ交換の条件を先に確認しておくこと。返品送料の負担と期限を見ておけば、万一のときの損が小さくなります。
注意点として、価格が極端に安い個体には手を出さないほうが無難です。旧年度のカラーが処分価格になっているのか、そうでないのかは商品情報から判断しにくい。正規の販売店で買えば、少なくとも品番と仕様が公表どおりであることは担保されます。
| 使い方 | 向くモデル | 理由 |
|---|---|---|
| 通勤・近所の買い物(1回30分程度) | ML373 / WL373 | 約212gの軽さが効く。価格も抑えられる |
| 旅行・一日中歩く日 | ML574 | ENCAPでクッション量に余裕がある |
| 細身に見せつつ長く歩く | CM996 | SL-1ラストの細身+C-CAPの持続力 |
| 親子でお揃いにしたい | YV373 / IZ373 | 面ファスナー仕様で子どもが履きやすい |
373を長く履くための手入れは「素材の切り替え」で決まる
買った日にやることは防水スプレー1本だけ
373を手に入れたら、履く前に防水スプレーをかけてください。ニューバランスの基本の手入れは「汚れをつきにくくすること」で、防水スプレーは水を弾くだけでなく防汚の役割も果たします。汚れが素材の内部に入らず表面に留まるので、後から落としやすくなる。
使うのはフッ素系のスプレーです。スエード調の部分に使えることを表示で確認し、20〜30cm離して全体に薄く、ムラなくかけます。1回で厚くかけるより、乾かして2回に分けるほうが仕上がりが均一になります。屋外か換気のいい場所で作業してください。
効果は永続しません。雨に当たったり、汚れを拭き取ったりするたびに落ちていきます。月1回、あるいは雨の予報がある前日にかけ直すくらいの頻度が現実的です。この一手間があるかないかで、半年後の見た目に差が出ます。
洗い方はスエード部分とメッシュ部分で変える
373のアッパーはスエード調とメッシュの組み合わせなので、洗い方も分けます。まず全体のホコリをブラシで落とす。次にスエード部分は、専用の洗剤をブラシに取り、水は控えめにして泡で洗い、泡と汚れを固く絞った布で拭き取ります。水を含ませすぎないのがポイントです。
メッシュ部分はスニーカー用の洗浄剤を水に溶き、湿らせた布で全体を濡らしてからブラシで洗います。洗浄剤が残ると乾いたときに白い跡になるので、濡らした布で残らないよう拭き取ってください。仕上げは風通しのいい日陰で自然乾燥です。
2つ目の失敗パターンがここに出ます。よくあるのが「洗濯機に放り込む」「直射日光やドライヤーで一気に乾かす」というやり方です。原因は、スエードもEVAも熱と過度な水分に弱いという知識が抜けていること。結果として毛並みが寝て黒ずみ、ソールが硬化して割れやすくなります。対策は、水は最小限、乾燥は日陰で丸1日、これだけです。

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クッション不足はインソールで補える
「373は好きだけど、かかとが少し疲れる」という場合、インソール(中敷き)を替えるという選択肢があります。ニューバランスは別売りのリプレイスメント用インソールを取り扱っており、EVA一枚のミッドソールに足りないぶんを上から足すという考え方です。
手順は、元のインソールが取り外せるかを先に確認することから始まります。靴の中を指で押して端が浮けば取り外し可能、まったく動かないなら接着式です。接着式のものを無理に剥がすと内部を傷めるので、その場合は薄手のインソールを上に重ねる方法に切り替えてください。
注意点は、インソールを足すと内部の容積が減るということです。ジャストサイズで買った373にぶ厚いインソールを入れると、甲が当たって痛くなります。インソールでの調整を前提にするなら、購入時に0.5cmの余裕を持たせておくか、薄手のものを選ぶ。この順序を逆にすると、履けない靴が1足増えます。
洗う前に、その個体の素材表示を確認すること。373はカラーによってスエード調のほかフェイクレザーを使った品番もあり、水洗いの可否が変わる。判断に迷ったら水洗いはせず、固く絞った布での拭き取りに留めるのが安全側の対応。
まとめ:373は「短時間・軽装・舗装路」で本領を発揮する一足
373を「安いニューバランス」と一言で片づけると、この靴の性格を半分見落とします。特殊クッション材を省いた結果として得られた約212gの軽さは、上位モデルには出せない価値です。逆に、その引き算はクッションの余力を削ることでもあり、1日中歩く用途では574や996に譲ります。どちらが上ということではなく、担当する場面が違うだけです。
最初の一歩としておすすめしたいのは、店頭でML373のDを一度履いてみることです。cmを合わせる前にウィズが合うかどうかを足で確かめる。そこがしっくりくるなら、あとは0.5cm刻みで詰めるだけで、373選びはほぼ終わります。幅が窮屈なら2E展開を探す、細すぎるならWL373を見る、という次の一手も自然に決まります。
※価格・カラー展開・サイズ在庫は時期により変動します。購入前にニューバランス公式通販や各販売店の最新情報をご確認ください。

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